相続がおこって、相続人全員で遺産を分ける話し合いを行う際に、そのうちの1人が認知症で話し合いが出来ないと、そのままでは遺産を分けることは出来ません。
成年後見人を選任する等の手続を経ないと、遺産を分割できず、自分以外の家族の財産が(成年後見を利用するまで)ある種の凍結状態になってしまいます。
自分の財産の管理運用の対策だけでなく、家族の財産を引き継ぐ場合に備えた認知症対策も必要な時代になってきています。
一人っ子で障がいのあるわが子。もし自分が認知症になったら、あるいは、自分が亡くなったら、わが子にどう不自由のない生活を送らせてあげられるだろうか。
親が認知症になってしまうと、わが子のために遺言書も書けません。たとえ、わが子に成年後見人がついたとしても、柔軟な財産管理がなされない可能性は残ります。
親が亡くなってしまった場合も同様です。わが子が遺言を書けない場合は、財産は最終的には国庫に帰属してしまいます。
1人株主のオーナー社長が認知症になってしまうと、重要な経営判断が出来ず、会社の事業がストップしてしまいかねません。
成年後見人がついた場合でも、会社とは無関係な成年後見人が株式を持つ可能性があり、会社とは無関係の第三者が会社の実権を行使する事態が起きるリスクがあります。
株式について相続対策をしていないと、もし株式を巡る相続トラブルが起きた場合、家族のトラブルがそのまま会社の経営トラブルに発展してしまいます。
認知症などによって物事を判断する能力が十分でない方について、本人の権利を守る援助者(成年後見人等)を選ぶことで本人を法的に支援する仕組みです。判断能力が不十分になってしまった後の法定後見制度と判断能力が不十分になる前に契約する任意後見制度の2つがあります。成年後見制度も、必ずしも万能ではありません。親族以外の司法書士や弁護士といった専門職後見人がつくことがあります。昨年の最高裁判所の資料では実に7割以上が親族以外の後見人です。法定後見の場合、判断能力の回復又は本人の死亡まで継続しますので、亡くなるまでコストがかかります。(例えば専門職後見人が選ばれた場合の報酬)また、成年後見制度は「本人のため」の制度→たとえ家族のためであっても財産を積極利用できません。原則として、生前贈与、遺言(死因贈与契約も)、不動産の入れ替え(購入、処分)、資金運用(株式・投資信託等への投資)、アパートの建設・建替え(それに伴う借入)といった行為はできません。成年後見制度の利用+αの他の財産管理手法の検討が必要です。そこで、注目が集まっているのが、親族などの信頼できる人に、あらかじめ財産の運用・処分を託す民事信託・家族信託です。